
その土地にどれくらいまで1階部分をつくっていいのかを定めた指標のことを「建ぺい率」と言いますが、個人的にはギリギリまで「建ぺい率」を使った方がいいと考えています。
理由は、敷地に余白を残せばその分外構工事の施工面積が増えることになり外構工事費用が嵩むと同時に、庭の維持管理の手間も増えてしまうから、そして、出来るだけ1階に部屋や収納を集約した方が老後はもちろんのこと、子育て期間中も圧倒的に家が使いやすいからです。
洗濯動線にしても、上下移動があるお家よりも水平移動だけで済むお家の方が圧倒的に負担が減るのは間違いないし、片付けや掃除にしても、上下に収納場所が分かれているより同じフロアに収納場所がかたまっている方が圧倒的に負担が減るのも間違いありませんからね。
そんなわけで、弊社ではギリギリのところまで「建ぺい率」を使うことで1階部分をなるだけ大きくする(=広くつくる)ようにしているのですが、とはいえこの選択は当たり前に縛られていては到底実現することが出来ません。
✔️家づくりの邪魔をする常識とは
家を建てる誰もが「南向き=価値がある」と考えますが、これは見方によって正解になることもあれば、逆に不正解になることもあります。
正解であるケースはいつかその家(と土地)を売却しようとお考えの場合。「南向き=価値がある」ということは高い価格で売れる可能性が高いし、かつ、売り(れ)やすいからです。
要は、資産価値が高い上落ちにくくもあるので、将来売却を考えている方にとってはベストな土地であるということですね。
他方、不正解の場合はずっとそこで暮らし続けようとお考えの場合です。
南向きの土地を買ってしまうと、部屋も全て南向きでつくらねばと考えてしまうと同時に、南に大きな窓を設置せねばと考えてしまい、これらが結果的にコストの増加と使いにくさと耐震性の劣化を引き起こすことになるからです。
コストの増加は、プライバシーを担保するためにカーテンや目隠しなどに余分なコストがかかってしまうから、防犯性を担保するためにシャッターや塀、門などに余分なコストがかかってしまうから、日当たりを担保するために2階建ての家を建てることになり結果、外構工事面積が増加するから、そして、そもそも土地代自体が最も割高であるから。
使いにくくなるのは、南向きの部屋にこだわると2階建てありきの設計となるため、生活が上下に分断され洗濯動線や片付けが複雑になるし、掃除の負担も確実に増えるから。
耐震性の劣化に関しては、耐震等級3の取得に必要な壁量は辻褄合わせで確保出来たとしても、耐震において最も重要な壁量バランスが南と北で大きく崩れるから、かつ、上下の壁量バランスも確実に悪くなるからですね。
大空間を必要とする1階は壁量が少なくなるのに対し、2階は細かく部屋を仕切るためどうしても壁量が多くなってしまいますからね。
そんなわけで、ずっとそこで暮らし続けようとお考えの方には、この「南向き信者」から卒業していただきたいと考えている次第です。
✔️日当たりの担保は設計で実現する
間取りを考える際、直射光じゃなければ明るい家をつくれないと多くの方が勘違いされていますが、安定した明るさを担保するために必要な光は直射光ではなく天空光であるため、この2つの光を使い分けることが設計では非常に重要になります。
天空光とは、大気中の塵や水蒸気によって反射、拡散する光のことで、直射光のように天候に左右されることなく室内に光を届けてくれるのはこの天空光です。
ゆえ、まずは天空光でいい部屋と直射光を取り入れたい部屋を区別しておいてください。
これを理解していただければこれまで「平屋は無理だ」と諦めていた土地でも平屋を建てることが出来るようになる可能性が格段にアップします。そして、平屋にすることによってコストが抑えられ、使いやすさも向上し、耐震に不安を抱える必要もなくなります。
日当たりや明るさ、そして暮らしやすさは土地によって決まるのではなく設計によって決まる。それぐらい設計は大事である。
これを覚えておいてください!
それでは、、、
追良瀬